椎名林檎と、初めてを重ねて

めちゃくちゃドキドキしている。だれからも見られていないことは承知の上で、一挙手一投足に無駄に緊張が走ってしまう。なぜかって?私は今、ひとりで渋谷のバーにいるのだ。 兎に角「あの子慣れていないのね」と思われたくなくて必死。このエッセイだって手…

reGretGirlに脅かされながら。それだけがまぎれもない愛なのだよ

ぜんぶreGretGirlのせいだ。彼らの“イズミフチュウ”という曲のせいで、恋人の家に荷物を増やせなくなった。 私は恋愛ソングより失恋ソングを聴くことが多い。その一つずつに重ねられるほど過去にたくさんの恋を持っているわけではないのに。 かわいくて瑞々…

リーガルリリーは暴力性を持って内在する

無精な私に、随時あたらしく音楽を教えてくれるガールフレンドがいる。 彼女は「夏の匂いがするね」なんて、私が照れて言えないからエッセイに書いているようなことを、あっけらかんと言うひとだ。あまりに平然と言うので、こちらの方が、照れていてはもった…

森七菜ちゃんに殴られて考察

バイトを終えた夜、行き慣れた帰路をチャリでなぞってゆく。片耳イヤフォンから流れてくる、森七菜ちゃんが歌う“スマイル”が突き刺さる。99年生まれの私は知らなかったが、スマイルはもともとホフディランが1996年にリリースした曲だそうだ。しかし、私がボ…

ポルカドットスティングレイがもたらしたもの

ポルカドットスティングレイというバンドと、私の敬愛する中島らもという作家はあまりにもマッチしないので、ひとつのエッセイに共存させてもいいものか小一時間悩んだことを、ここ冒頭に記しておく。 らもの著書“頭の中がカユいんだ”にある、この一段落がす…

“トーキョーナイトダイブ”という曲の持つ罪について

横山優也の歌声は、KOTORIが奏でるロックサウンドは、いったい何人の若者を掬ったのだろう。 KOTORIというバンドを、私はたしか、この曲で知った。たくさんの情けない夜を余すことなくemoという芸術に変えてしまう、トーキョーナイトダイブという曲の持つ罪…

プロポーズをさせてね

赤の他人が歌う、これまた赤の他人の話。 どうしてひとは「私のための歌だ」と信じるのだろう。音楽には、聴き手に強烈な自覚をもたらし、かつそれを信仰に変えてしまう力がある。 口下手な私は長いことエッセイを書いているが、それも書ける心理状態でない…